先週の日曜はいい陽気に誘われてまたふらふらと観光へ。連日外出が続いていたので、この日は近場に出掛けてきた。
まずは時間的にも昼食だったが、これまで四国へ来てうどんをあまり食べていないことを思い出す。高知でうどん?と思うところだが、そこは讃岐・香川の隣県。県庁で拝借した資料を見ながら、良さそうな店へと向かった。
選んだのは市中心部にあるうどん屋の手打うどん藤家。ここの看板メニューは「ザブザブぶっかけ」と「タイカレーうどん」で、うどんのくせに妙に迫力あるその名前が決め手となった。
若干キワモノのリスクを背負っての注文だったが、結果的にはどちらも想像を超える美味さだった。
麺はつるつるしこしこ。ダシの味もちょうどいい。ちく天付きかけうどんのザブザブも良かったが、タイカレーはダシ汁との調和が完璧で、スープまで飲み干した。
そして再来を誓いつつ店を出た後は、平日の運動不足を解消するため、高知市東部にある県立牧野植物園へと向かった。
ここは植物分類学者・牧野富太郎氏を記念した植物園で、五台山の上に位置するため眺望がとてもいい。
春の風が心地良く、山上の開放感もあり快適に散策。高知の市街地の桜はとっくに散ってしまっているが、ここの八重紅枝垂はまだまだ健在で、お花見までできてしまった。
植物には全然詳しくないのでその方面の薀蓄は全く分からないが、薬用植物コーナーで茴香や花梨を見てこれは分かると喜んでみたり、ヘンテコな形の植物をまじまじと見て、何かも分からずふむふむ言ってみたり。
shanも同じようなレベルだが、北園、南園とそれなりに楽しく見て回る。ちなみにshanは下の写真のチューリップを「キャベツ」と言って喜んでいた。
そして、敷地内を一周した後は温室に入った。南国の珍しい植物が展示されていて、子供っぽいが植物園で一番好きな場所。奇妙な形のサボテンや、様々な種類のバナナなどを見る。
そして温室内を猿のように右へ左へうろつき回った後、ようやく出口へ。すでに16時前後だったが、高知は日が長くまだ日没まで時間があったので、そのまま近くにある武市半平太旧邸及び墓を見に行くことにした。
早速車でその場所へ移動したわけだが、見えてくるのは田畑ばかり。大丈夫か心配になった頃、唐突に案内の看板が現れた。水田の脇の、側道の一部のような駐車場に車を停めてその場所に向かう。
土佐勤王党の党首、武市瑞山の旧邸。
場所といい大きさといい、「何とも慎ましい」というのが第一印象。本人は非常に高潔な人物だったそうだが、その人柄が偲ばれるような質素な邸宅だった。
そして驚いたのは、現在も一般の方が住んでいるということ。しかしだからこそ、傾きかけた屋根や、漆喰が剥げ落ちたままの壁など、他の史跡よりもより生々しい姿を見ることが出来たように思う。
また、家の裏山には武市瑞山を祀った瑞山神社という社がある。これは武市が明治の世になって、名誉回復した後に建立されたものだそう。そちらの方に登って行くと、邸の全体を見渡すことが出来た。
だがゆっくり眺めていると、住人の方のと思しき飼い犬(カイ君似)に下から激しく吠えられしまいすごすご退散。
神社の一段上には静かに休む武市瑞山と妻・富。墓所は眺めが良く、桜の咲くいい場所にあった。今も相変わらず仲睦まじそうな二人。
瑞山神社の方に戻り、これまたささやかな記念館を見学。その横には有志の方が建てたという石碑があった。碑文は武市の獄中の作になる遺詠。
「花依清香愛 人以仁義榮 幽囚何可恥 只有赤心明」
漢文なのでさすがshanがスラスラと先に読んでしまう。感想を聞くと「詩はきれい、そして昔の人は気持ちが熱いね」と。中国出身者が美しいと思うのなら、きっと漢文の素養も相当なものだったのだろう。
決して色々なものがあるわけではなかったが、穏やかな景色の中に、ただ一人の人物の精神だけがそっとあるような。表現し難いけれど、そんな何か妙に印象的で、清々しい場所だった。
少しばかりしみじみした余韻を引き摺りつつ、夜の目的である高知城の「花回廊」を見るために市街地へと戻った。これは一言で言えば城のライトアップで、3日間限定のイベント。軽く夕食を取っている間に日は沈みちょうどいい時間になった。
追手門あたりから道の両脇には紙の灯篭が並び、独特な光景。所々、華道の様々な流派の作品がライトアップされている。どれも良かったが、個人的にはやっぱり夜桜が一番だった。
石垣の壁面に映写機で色鮮やかな物語を映し出したり、和傘と照明を組み合わせてアートにしてみたり。昼とはまた違う城の雰囲気を楽しむ事が出来た。
その後は帰宅してシャワーを浴び、いつも通り月曜に備えて休息。ローカルな場所も多かったが、十分に楽しめた一日だった。